2026年6月30日、日本の政治にまた一つ、大きな動きがありました。
日本の国旗(日の丸)を公然と傷つける行為を処罰する、いわゆる「国旗損壊罪」の創設法案(国旗の損壊等の処罰に関する法律案)が、衆議院本会議で可決(衆院通過)されたのです。
このニュース、SNSや報道では「異例の採決」「造反者がでた」など、かなり緊迫した様子が伝えられています。
「国旗を大切にするのは当たり前じゃないの?」と思う方がいる一方で、「表現の自由が脅かされるのでは?」と強く反対する声もあります。
この記事では、この「国旗損壊罪法案」とは一体どんな内容なのか、なぜ今になって法案が作られたのか、そして今後、舞台が移る「参議院」でどのような点が問題(論点)として激しい議論になりそうなのかを、項目を分けてどこよりも分かりやすく解説します!
INDEX
そもそも「国旗損壊罪法案」とは?具体的な内容と罰則
まずは、今回衆議院を通過した法案の中身をシンプルに整理しましょう。
この法律が成立すると、日本の国旗に対して以下のような行為を行った場合に刑事罰が科されることになります。
対象となる行為
法案では、「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法により、公然と国旗を損壊し、除去し、又は汚損した」場合が対象とされています。
- 損壊(そんかい): 破る、燃やすなど
- 除去(じょきょ): 掲げられている場所から勝手に引き剥がすなど
- 汚損(おそん): スプレーで落書きする、泥を塗るなど
重要なのは「公然と」という点です。これは「不特定多数の人、またはたくさんの人が認識できる状態」を指します。
科される「罰則」
この法律に違反した場合、科されるペナルティは以下の通りです。
2年以下の拘禁刑(※)、または20万円以下の罰金
(※2025年から懲役と禁錮が一本化され「拘禁刑」という名称に変わっています)
なぜ今?法案が提出された「意外な背景」
「今まで日の丸を燃やしても罪にならなかったの?」と驚く方も多いかもしれません。
実は、これまでの日本の法律には奇妙な「アンバランスさ」が存在していました。
外国の国旗を守る法律は、最初からあった
現行の刑法92条には「外国国章損壊罪(がいこくこくしょうそんかいざい)」という規定がすでにあります。
日本国内で、外国の国旗を侮辱する目的で破ったり傷つけたりすると、2年以下の懲役(拘禁刑)または20万円以下の罰金が科されます。
これは、他国との外交関係を悪化させないための決まりです。
自国の国旗を守る法律がなかった
一方で、「日本国旗(自国旗)」を傷つけた場合の専用の処罰規定はこれまでありませんでした。
もちろん、他人が所有している日の丸を勝手に盗んで燃やせば「器物損壊罪」や「窃盗罪」に問えます。
しかし、「自分が買ってきた日の丸」を自分の敷地や公の場で燃やした場合、これまではそれを直接取り締まる法律がなかったのです。
そのため、自民党や日本維新の会などの推進派から、「外国の国旗は守るのに、自国の国旗を守る法律がないのは法制度としておかしい。国の威信や国民感情を守るために新設すべきだ」という声が長年あがっており、今回の議員立法へとつながりました。
どこまでがセーフ?「対象外」となる具体例
「表現の自由を過度に縛るのではないか」という批判に配慮する形で、この法案には「これは処罰の対象外(セーフ)ですよ」という基準がいくつか明確に示されています。

政府・与党の解説によると、個人の「内心(どう思ってやったか)」を詮索するのではなく、あくまで外見的・客観的に判断されます。以下のようなケースは対象外です。
- お子様ランチの旗:
小さな爪楊枝の旗をクシャクシャにしても罪にはなりません。 - 創作物の中での描写:
絵画、イラスト、アニメ、マンガ、ゲーム、映画、さらには「生成AI」による創作物の中で、日の丸が汚れたり破れたりして描かれていても対象外です。 - 報道やSNSのリポスト(拡散):
誰かが国旗を損壊しているニュースを報道したり、その様子が写ったSNSの投稿を単に「リポスト」して拡散する行為は処罰されません。
逆に「アウト」になる現代的な例
注意したいのは「ライブ配信」です。
自分の部屋であっても、YouTubeやX(旧Twitter)、TikTokなどのライブ配信を使い、不特定多数が見られる状態で国旗を破ったり燃やしたりする行為は「公然と」に該当するため、逮捕・処罰の対象になります。
衆議院での「異例の採決」と与党内の造反劇
今回の衆議院本会議での採決(6月30日)は、非常に重苦しく、異例の光景となりました。
野党がそろって「欠席」
中道改革連合や共産党、社民党などの野党は、与党(自民・維新)による国会運営(他の法案の審議の進め方など)が強引だとして猛反発。採決そのものを全員ボイコット(欠席)しました。
驚くべきことに、この法案を自民・維新と一緒に共同提出していたはずの「国民民主党」や「参政党」までもが、野党の足並みを揃えるために採決を欠席するという、きわめて異例の事態が起きたのです。
自民党の重鎮・岩屋氏が「造反・棄権」
さらに波紋を呼んだのが、自民党の岩屋毅前外務大臣が、採決の直前に本会議場から退場し、投票を棄権(造発)したことです。 岩屋氏は退場後の取材で、以下のように語っています。
「国旗を尊重するという意識はやはり自然な形で育まれるべきものであって、刑罰で強制されるべきものではないと一貫して申し上げてきた」
この言葉は、この法案が抱える本質的な難しさを物語っています。
舞台は参議院へ!これから問題になりそうな「4つの論点」
衆議院を通過したため、次はいよいよ参議院での審議が始まります。
しかし現在、参議院では与党(自民・維新)が少数派(ねじれ、または過半数ギリギリの厳しい状況)であるため、野党の協力がなければ成立しません。
今後、参議院の委員会などで「問題点」として激しく追及されそうなポイントを4つに予測・整理しました。
「憲法21条(表現の自由)」との衝突
参議院で最大の争点になるのがこれです。
国旗を傷つける行為は、決して気持ちの良いものではありません。しかし、歴史的には「戦争反対」「政府の政策への抗議」といった、政治的な意思表示(メッセージ)として国旗が使われるケースがあります。
反対派は、「国家にとって不都合な批判や抗議の表現を、刑罰をチラつかせて弾圧することにつながるのではないか」と主張します。
「不快な表現であっても守るのが民主主義だ」という憲法論が、参議院で深く議論されるでしょう。
「著しく不快又は嫌悪の情」という基準のあいまいさ
法案にある「人に著しく不快又は嫌悪の情を催させるような方法」という文言は、あまりにも主観的です。
「何をもって『著しい不快』とするのか?」の境目が一律ではないため、時の政権や警察の判断によって、解釈がいくらでも広がってしまう(濫用される)危険性が指摘されています。
参議院では、この文言の法的安定性が厳しく追及される見込みです。
「立法事実」はあるのか?(本当に今必要なのか)
法律を作るには「今、社会でその犯罪が多発していて困っている」という明確な事実(立法事実)が必要です。
しかし野党側は、「いま日本国内で、日の丸が日常的に街中で燃やされ、社会秩序が崩壊しているような事実はない。万が一、他人の国旗を壊したり暴れたりすれば、すでに現行法の器物損壊罪や業務妨害罪で100%逮捕できる。なぜわざわざ今、新しい刑罰を作る必要があるのか」と、法案の必要性そのものを疑問視しています。
「愛国心」を刑罰で強制することへの是非
自民党の岩屋氏が指摘したように、「国を愛する心や、国旗を敬う気持ちは、個人の心の中で自発的に育まれるべきもの」という思想があります。
これを法律という「国家の強制力(刑罰)」を使って縛ることは、結果として「国家への忠誠の強制」につながり、憲法19条の「思想・良心の自由」を侵すのではないか、という点が哲学・人権の観点から問題視されています。
今後の見通し
「国旗損壊罪法案」は、一見すると「国のシンボルを守る」というシンプルな法律に見えますが、その裏には「表現の自由」「個人の内心の自由」という、民主主義の根幹に関わる非常にデリケートな問題が隠されています。
衆議院は自民・維新の数の力で通過したものの、野党が猛反発して国会審議そのものを拒否する構えを見せている今、参議院での審議がスムーズに進む可能性は極めて低いです。
会期末に向けて、この法案が本当に「成立」するのか、それとも「廃案・継続審議」になるのか。私たちの表現の自由にも関わる問題として、今後の参議院の動きに要注目です。








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